バッハが聴こえる朝

4年 ago roman 0
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風邪を引いた。

空気の乾燥するこの季節、気をつけなければと思ってはいた矢先である。

けだるい気持ちと身体で横になっていると、どこからともなく聞えてくる音がある。

開けていくような空間を感じさせるその音は、バッハの曲であった。

ヴァイオリンの為のパルティータ、第一番より、ブーレである。♯ファ シ ♯ファ シ ♯ファ ソ

ソ ♯ファミ で始まるこの曲は、ヴァイオリン独奏のために書かれた作品である。

第二番のシャコンヌが有名と言えば有名なのだが、浮かんできたのは第一番のブーレであった。バッハ

の作品群は古今東西類を見ないものであるし、おそらくこの世がある限り伝えられ続ける音楽の一つと

言えよう。この無伴奏パルティータは、一つの楽器だけでどれだけのことがなし得るのか、という究

極の課題に応えたような感もあるのだが、そんなことをバッハ本人は意識していなかったのではない

か。この作品群や、同じく無伴奏のチェロの為のパルティータも、であるが、このような曲を作った

バッハの天才は、我々凡人にはおよそ測り知れない。

バッハの音楽が頭の中で流れている時、私の目には、突き抜けるような冬の午前の青空が映っていた。

あの空をどこまでも行くと、バッハに出会えるような感じがする。

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