一匹の猫

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一匹の猫がいる。

中東のほうの国だろうか。それとも北アフリカのほうだろうか。

白い建物が青空にまぶしく見える、そんな街の一角にひとびとの住居がある。

一本の路地の右手に、何かの屋台のような小さな店があり、左手には老人が二人、テーブルをはさんで

腰をかけ、一人は新聞を広げ、もう一人の恐らく友人でもあろうか、彼に何か話しかけているようだ。

静かで、穏やかで、豊かな空間。

二人の老人の少し向こうには、若者がせわしなげにどこかへ行こうとしているのが見える。

老人たちの足元に、一匹の猫がいる。

キジ猫で、おとなしく座って、新聞を手にした老人の足元で、彼らを見つめている。

その写真を目にした時、さまざまな事が脳裏によぎった。

何度もその写真を目にしたが、いつ見ても、その空間に目も気持ちも惹きつけられ、また、その老人と

猫に、会ってみたくなるのだ。

彼らと猫は、私が羨望してやまない何かを、いともやすやすと、日常の一コマで手にしている。

一匹の猫は、私の憧れでもある。

写真は岩合氏のひめくりカレンダーによる。

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