窓の外

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早朝、うとうとしていると鳥の声がする。

ちゅんちゅん、という声。ちっちっという鋭い声。表現の仕様のない、しかし、澄んだ声。

さまざまな声が聞えるともなく聞こえるのは、心地良さを誘う。鳥の姿を目で追うことは

出来ずとも、彼らの鳴き声は快よい音だからだろう。

そんな風に入り込んで来るような、音楽がある。ふっと聴こえてくるような音楽。

それは頭の中で鳴り始める。頭の中では静かな音で鳴る。シシシシラソソ#ファミミソシ…で

始まる有名な、「禁じられた遊び」という映画に使われたので、この名がついた曲だ。

作曲者不詳の、ロマンスとも呼ばれる短いメロディーからなる。ABAという形式をとっていて、

最初のテーマのあと出てくるBの部分は、最初の短調から一転、澄んだ鳥の声を早朝聞くような

心持ちを誘う一方、一種の鮮烈さをもって、長調に変わる。テーマ同様少ない音で構成されて

いるが(#ソ#ソ#ソ#ソ#ファミミ#レ#レ#レ##ド#レ…というメロディーである)テーマとの

対比が際立つ部分である。その中間部が歌い終えると、最初のテーマが戻ってくる。

実際の演奏で聞く時、やはり、この曲をアレンジした、ナルシソ・イエペスという、

スペインの名ギタリストを選んでしまう。本人のアレンジだから、という理由ではない。

とにかく、メロディーの歌わせ方、ちょっとした間合いの作り方(休止符があるわけではない

のに、ほんの一呼吸、おいてから次に進むところ)などが絶妙なのである。

しかもこのギタリストは、全く雑音の入らない音を保って演奏出来るという稀有な技術の、

ギタリストの中でも最高峰といえるひとなのである。

音は柔らかくても、響きを残すギターの不思議な色合いが、この、愛らしくもある小曲を彩り、

心の中に音を刻み込む。

窓の外から聞こえてくる鳥たちの歌は、私の中にある音と呼応するかのようにも聞こえた。

追記:メロディーの表記はいずれは譜面で行いたいと考えている。尚、Bの部分に出てくる#が

二つの所は間違えではなく、ダブルシャープで、×とも書く。二段階、音程を上げる。

詳細は機会があれば書いてみたい

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