雨の日の楽しみ

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まだまだ梅雨である。

晴れ間を喜んでいたいところだが、晴れるとただ暑いのでなく、蒸し暑いので閉口する。

降れば降るで、しっとりと濡れるこぬか雨から、雹が降らんばかりのどしゃぶりまで、今年は

特に雨が多いせいか、梅雨を例年より意識している気がする。

秋の夜長ではないけれど、雨の日の楽しみは、なんとなく、読書や音楽、といった気分になりがちだ。

別に雨で無くても良いのだが、手元に本があればそれで事足りるのだから、外出をしないで

出来る非常な贅沢という感覚がある。

読書を楽しんでいる、今、読み返して、その面白さに改めて感心している本がある。

連作物になるが、村上元三の「加田三七捕物帖」である。

加田三七という若手の定回り同心がさまざまな謎を解く、と言えば散文的に過ぎてなんとも

無味簡素だが、この加田三七シリーズには、同心を止めたあとの三七の活躍する、捕物そば屋も

含めると、文庫にして四冊ほど、入手出来る。

この村上元三の、人間にたいする洞察力が三七によって反映されていて、読後感、さまざまな

思いを残したり出来るのもまた楽しいのだ。

人というものをいかに描くか、どんなまなざしで見据えるか、その結果が小説であると言えなくも

無い気がする。肉付けはそれぞれの小説の内容によるから、あとは好みという事になるが、この作は、

手元に置いておきたい本のひとつである。

この捕物帖に収録されている「二人の老女」などは、この一連の作品集の中でも大変秀逸である。

内容については読んだ時の面白みが半減するから粗筋も書かないが、時代小説は読まないという向きに

もお薦めしたい本だ。

ジャンル分けにこだわりすぎると、優れた作品に触れずにいるままになってしまう。

その辺は、どんなものに限らず、自省も籠めて、感じるところである。

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